2012年03月29日

ここから発信/或いは/通信の途絶

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CQCQ



 十年一昔。

 思い出してしまった。
 十年前の朝。
 その前夜に何をしていたか、はっきりした記憶はない。
 引越しの片づけにひと段落し、空っぽに近づいた部屋で蝋燭に火を灯していたのかもしれない。
 ただ、どこか、お店に飲みに行っていたかもしれない。
 はっきり思い出したのは明けた朝のことだ。
 家はがらんどうなので、当時交際していた女性の部屋にいさせてもらっていた。彼女は帰省していた。
 二日酔いだったか、の記憶はない。単に空腹を満たすためだったかもしれない。
 私は近所の自販機に、コーンポタージュを買いに出ていた。
 いや、二日酔いはあったな。トマトジュースも買っていた。それを取り出そうとしたときに、彼女から着信があったのだ。

 あ、覚えていてくれたんだ。
 明確に、うまくいっていなくて、卒業して遠距離になったらもう駄目なんだろうな、と予感している状態だったから。
 うれしかった。言葉をくれるんだと。私は終わらせたくなかったから。こういうことが、とてもうれしかった。

 彼女曰く「今日家族みんなでそっちに行くから家から出ていって」

 私は終わりたくなかったから、私がまずいところを改めれば改善していくと思っていたから、
 思わず怒ってしまった。それだけ? と。彼女は「うん」と言ってから、しばらく考えて、「あ、誕生日おめでとう」と、言った。

 もうどうでもよかった。誕生日。そんなもん捨てちまえ。
 荷物をまとめて、申し訳程度だが掃除をして、家を出た。

 この日、どこで眠ったか覚えていない。
 大学の土地で過ごす最後の夜は、大学構内にあるサークル活動棟。所属サークルのスペースにダンボールを敷いて眠った。眠れなかった。このことは彼女には話していないと思う。友人に話したら、100km離れたところに住んでいるのに、「言ってくれれば迎えに行ったよ」と言ってくれた。そんな、頭が回る状態じゃなかった。




 十年経って。
 また、誕生日を独りで過ごすことになる。
 30過ぎたおっさんがこんなこと気にすることないじゃないか。
 これが正論だろう。
 だが思い出してしまった十年が。
 通底して抉られていく。

 そこになにがあったか、じゃない。
 そこでなにをしでかしたか、じゃない。
 だからなんなんだ、じゃない。
 ひとりはきらいだ
 十年後は、いい記憶でありたい。

タグ :誕生日

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Posted by ギマ at 01:30│Comments(0)日常
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