四季自由律

父でもなく母でもなく

　連絡のつく知人友人は皆、無事だった。
　連絡先が変わってしまってわからない人がいる。
　心配だが。無事を願っている。
　妻は一時期福島県で働いていたこともあって知り合いが多く被災した。
　それからも続く事態に心穏やかでない日々を送っている。

　そんな中、娘は変わらず奔放だ。
　相変わらずスーパーや図書館を好き放題のっしのっしと歩き回り、
　警告マークの三角を探し、見つけると大声をあげて駆けていく。
　ボール遊びも好きで、投げてあげると「えいいいいい！」と叫びながら蹴りにいく。
　意外と強烈なパスがとんでくる。
　言葉を聞いて理解しているのだが、発言はほとんどない。
　ただ、いくつかの言葉は発音できるようになった。
　ら行は苦手なようだ。
　そんな娘が、つい昨日、とうとう明確な言葉を放った。

　妻が結露した窓に描いた絵。
　それを指して、
「わんわん」

　残念ながら父母ではなかった。
　ＮＨＫ教育の「いないいないばあっ！」のキャラクターだ。その後、うーたんの絵も描いたら、「たん」と言った。
　「いないいないばあっ！」と言えば、ことちゃんが卒業するのだそうな。なんだか寂しいのぅ、としんみりしてしまう。
　卒業と言えば、「クインテット」も土曜日だけの放送になってしまうそうで。新番組「フックブックロー」も楽しみではあるが、これは悲しい。

「わんわん」と言った日、スプーンを「ぷ」と言い、フォークを「く」と言い、パンを「ぱん」と言い（同時に「いないいないばあっ！」の『ぱぱぱやパン』をちょっと踊る）、「ピタゴラスイッチ」の『なぞなぞうた・いたちのたぬき』に合わせて１から１０まで言った。
　ら行はまだ言えないが、遠からず言ってくれるだろう。何故か、ちょっと照れながら。
　そのうち、両親にも言葉で呼びかけてくれるだろう。

　ETV礼賛のようになっているし主旨がずれているが、
　こうした日々の一つ一つを娘は糧にして生きている。
　私はそれを撮影し、写真に残す。
　DATE機能付きのカメラを買った。日々の記録として、主に家庭内の写真を撮るために。